演 題 仮想原子を用いたWWW上における化学結合教材の開発
発表者 ○佐野かおり,森川鐵朗(上越教育大自然系)
連絡先 〒 943-0816 新潟県上越市藤新田902-7
ハイツアングレム 202号室 TEL: 0255-26-3985
E-mail: h7291@seagreen.ocn.ne.jp
キーワード インターネット、教材(化学結合)、仮想原子、遠隔地授業
開発意図
適用分野
期待効果
特徴など
高等学校の化学において、わかりづらい化学結合(ここでは水素分子イオンの共有結合)について取り上げ、簡単な教材を作る。そして、どこからでもアクセスして利用できるようにする。
環境 適応機種 インターネット利用可能なパソコン,
(VRML1.0and2.0用ブラウザがインストールされ
ている )
OS名 Windows95,Macintosh
ソース言語 HTML,VRML
周辺機器  
流通形態 ・(○)化学ソフトウエア学会の
無償利用ソフトとする
・独自に配布
・ソフトハウス、出版社等から市販
・ソフトの配布は行わない
・その他 ・未定
具体的方法
WWWページにのせ、無償ダウンロ
ードできるようにする。

1.はじめに

 なぜ化学反応が起こるのか、なぜある一つの物質と反応する物質は決まっているのか。ということは、高等学校の化学を勉強をしていれば思いつく疑問であるが、教科書では詳しく説明がされていない。教科書に書いてある結果だけをそのまま信じて覚えるだけである。書いてあったとしても、平面的で簡略化した図だけである。
 教科書の図では平面的でわかりづらい時のために、分子模型を使用する場合がある。コンピューターの分子模型を使った研究論文も多い。これなら実際には目で見ることができない原子や分子を、模型という形で実際に手で触れたり、見たり、組み立てたりすることができる。これなら、分子(原子、イオン)の立体的な構造を理解することができる。また、モデルで表された原子(分子、イオン)の物性を表示することができれば、表示された分子の性質が構造と関係していることもわかるため、教科書や黒板による平面表示より、分子の構造などの細かいところもわかりやすくなる。よってそれに基づいた研究等も多くなされている。
 しかし、上越教育大学学部2年(理科コース)を対象として、高等学校の化学の内容(特に、私自身も苦手だった化学結合などの内容が中心)の興味、関心、理解度を知るためにアンケートをとったが、その結果は、粒子の構造や化学結合などの目に見えないものへの関心や理解度は少なく、それに対して、化学変化を見る実験のような目に見えるものへの関心は比較的高かったといえる。それでも化学がわからない、興味がないと言う人が多かったことから、高等学校レベルでの化学を学ぶには、分子(原子)模型だけでは不十分であり、もっと内部の電子のレベルから、一番基本的な反応である化学結合についてもっと取り上げ、視覚化をしたりすることで、分子等のの形だけでなく、それらの粒子が反応をする時の様子を簡単にでも表現して、化学反応(化学結合)の仕組みを理解していくことが良いと考えている。ただし、これは実際の粒子とは異なり、動きも正確ではない。わかりやすさを重視した仮想原子である。しかし、それによって少しでも幅広く理解でき、生徒たちが化学により関心を持つことができれば良いと考えている。 本研究では、化学の最も基本的な反応である、水素分子イオンの共有結合に焦点を置いて、化学結合を表示するプログラムを組んでいくことにする。

2.プログラムの概要

コンピューターに依存しない3D表現方法としてVRML言語がある。これを使えば、マウス操作で自由に3D図形を移動、回転、拡大、縮小させたりすることができる。しかし、化学結合のように、原子や電子の様子や動きまでを実際に表すことはできない。そこで、原子間距離をいろいろに定めて、その時の電子の様子をVRMLで表示することで、結合の様子がわかりやすくなるようにした。 ここで使用されているVRMLオーサリングツールとブラウザは、 Sony Corporation のCommunity Place Conductor 2.0 とInterleaf, Inc.のWorldView for Windows 2.1or for Mac 2.0 である。

3.おわりに

本研究は、わかりやすいように、難しいことは省いて、実際のものとは違う仮想原子を用いて、結合が電子の−の力や、原子核の+の力によって結合していることがわかるように作ったため、大学以上の高等レベルでは、かなり不適切である。しかし、いままで曖昧だった共有結合の認識が少しでも確かなものになれば良いと思う。それに現時点では、水素分子イオンの共有結合のみなので、以後改良を重ね、共有結合だけでなく、イオン結合等にもふれていきたい。

4.参考文献

小谷正博「化学結合をどう教えるか」『化学と教育』42巻6号1994年438頁
坪井正道「水素結合」『化学と教育』42巻5号1994年322頁
宮阪憲一 「電子反発理論と分子模型」『化学と教育』日本化学会誌 43(1)51(1995)
シェリンスキー 大竹三郎訳『化学結合とは何か』東京図書(1970)
小林正光 野村裕次郎 本岡達 内藤周代『四訂版 高等学校 化学』数研出版(1992)
The journal of Chemical Software , Vol.1,No.2(1993)「研究論文」分子モデリングとその構造化学的応用 矢野敬幸、尾崎成子、下沢隆
J. Chem.Software ,vol.No3.4,p73(1993)
分子の電子図鑑の研究開発ー基本有機化合物編ー
獅々堀 彊 、倉橋 研吾
インターネットアドレス:http://cssjweb.chem.eng.himeji-tech.ac.jp/jcs/v1n3/a6/textj.html