演 題 遠隔地に対する動画 (原子軌道表示) 転送における種々の方法の比較検討
発表者
 (所属)
時田澄男,○杉山孝雄(埼玉大学工学部)
近藤智嗣,菊川健(メディア教育開発センター)
連絡先 〒338-8570 浦和市下大久保255 埼玉大学工学部応用化学科 時田澄男
Tel : 048-858-3516, Fax : 048-858-9534
E-mail : tokita@apc.saitana-u.ac.jp, sugiyama@apc.saitama-u.ac.jp
キーワード  インターネット,WWW,ホームページ,GIF アニメーション,QT ムービー,QT VR
開発意図
適用分野
期待効果
特徴など
WWWで,動画を取り扱う際の種々の方法(動画技術)のうち,以下の技術(GIF (Graphics Interchange Format) アニメーション,QT (QuickTime) ムービー,QT VR )と,動画圧縮法について比較検討した.
環 境 適応機種名 インターネットWWWが利用可能なパソコン等
(Netscape Navigator などのブラウザが動作すること)
O S 名 Mac OS, Windows95, Windows NT   
ソース言語 HTML, QuickTime
周辺機器 LANボード,LANカード,モデム・ターミナルアダプタ
流通形態
(右のいずれ
かに○をつけ
てください)
 ・化学ソフトウェア学会の無償利用 
  ソフトとする
 ○独自に配布する
 ・ソフトの頒布は行わない
 ・その他     ・未定
具体的方法

 ホームページから表示及びダウンロード可能(予定)

1.目的
 インターネット・WWWを利用した化学関連のホームページが最近増加している.
 われわれは,水素原子の原子軌道の表示に関する研究1,2) の一環として,遠隔地に対する動画転送における種々の方法について比較検討した.

2.方法および結果
 原子軌道として水素原子の4d軌道を選んだ場合の検討例を以下に記す.4d軌道は5種類ある( 4d3z2-r2, 4dxy, 4dyz, 4dzx, 4dx2-y2) ので,すべての原子軌道を一画面で同時に動画表示することを試みた(図1).一画面動画表示により 3z2-r2 軌道以外の4個の軌道の形が等しいことが容易にわかる.また,単独の原子軌道の動画表示も行なった.
 インターネット上における転送速度は,途中の回線の容量,使用人数などよって大幅に異なる.例としてメディア教育開発センター上のホームページの動画像(約 1 Mbytes)を,埼玉大学に置いたパソコン上のブラウザで表示するときの転送速度を測定した(午前9時−午後7時).もっとも速かったのは午前9時頃で100 kbytes/s 程度,もっとも遅かったのは午後5時頃で 20 kbytes/s 程度であった.時刻によって5倍程度,転送速度が変動することがわかった.
 動画ファイルは,一般的に大容量になる(図1の画像( 240×240 Pixel 24bit Color )を含む 25 枚の静止画から作成した動画の場合約 4300 kbytes ).上記の2点から,ホームページ上に動画ファイルを載せるときには,圧縮する必要があると考えられる.
 数種類の動画技術(GIFアニメーション(アニメーション GIF とも呼ばれる) 3),QuickTime ムービー4,5) ),QuickTime VR4,5) )および動画圧縮法(GIF アニメ LZW,QT シネパック,QT ビデオ,QT アニメ,QT モーション JPEG)を試みファイル容量と画質を比較した.上記の動画ファイルを圧縮したときのファイル容量は,532 kbytes, 429 kbytes, 495 kbytes, 1100 kbytes, 770 kbytes であった.QT ムービーと QT VR の各圧縮ファイル容量はほぼ等しかった.圧縮したファイルを圧縮しない場合と比較すると,QT ビデオおよび QT アニメでは,画質の低下が目立たなかった.それに対してGIF アニメ LZW,QT シネパック,QT モーション JPEG では,明らかに画質が低下した.

3.結論
 GIF アニメーションには,ブラウザさえあれば,他のソフトウェア無しで,動画表示が可能という利点がある.また,QT VR(表示用ソフトウェアのインストールが必要4))では,ダウンロードした動画像を,インタラクティブに動かせるという利点がある.
 ホームページ上では,GIF アニメーション,QT VR(ビデオ圧縮)2種類の動画技術・圧縮法の画像ファイルを載せておけば,利用者がそれぞれの環境にあわせて最適な動画を見ることができることがわかった.

参考文献
1)時田澄男,「目で見る量子化学」,講談社 (1988).
2)時田澄男 他,”水素原子の原子軌道の可視化”,J. Chem. Software, 3, p. 37-48 (1996).
3)電視郎,「新 GIF アニメーション」,エーアイ出版 (1997).
4)QuickTime のホームページ," http://quicktime.apple.co.jp/ " .
5)姉歯 康,「QuickTime 3 ガイドブック」,(株)びー・えぬ・えぬ (1998).

図1.水素原子の5種類の4d原子軌道 (a) とその回転.
      (b) : X軸 30°; (c) : X軸 60°; (d) : Y軸 30°; (e) : Y軸 60°.