県立新潟女子短期大学付属幼稚園ホームページ作成について



県立新潟女子短期大学幼児教育学科
原野明子


 近年、我が国では急速に少子化がすすみ、平成7年の合計特殊出生率(ひとりの女性が一生の間に生む平均子ども数)は、現在の人口を将来も維持するのに必要な2.08を大きく下回る1.42となっている(厚生省)。このように、子どもが少ないがゆえに、子どもの一挙手一投足にまで親の目が行き届くようになっている。また、親自身もきょうだいが少なく、小さい子どもと触れ合う経験が少ない人たちが増えてきているため、小さな子どもを見ると、どのようにして子育てをおこなったらよいかという子育て不安が母親達の中で大きくなっている。同様に、子育てに対する親の期待と不安は、核家族化、家庭の地域からの孤立化とあいまって、教育情報や育児産業への傾倒といった形であらわれてきている。子どもを小さい頃から塾に入れ、成果を見いだそうとする親が増えてきていることからもそれを伺い知ることができる。

 子どもが初めて集団生活をおくる幼稚園や保育園に子どもを入れる際にも様々な情報が親たちの間を駆けめぐる。幼稚園は文部省の定めた幼稚園教育要領によって保育がすすめられてはいるが、カリキュラムは各園の建学の精神にまかせられているといっても過言ではない。従って、園により、子ども達の毎日の生活は異なる。小学校のように数字や文字を教える園もあれば、遊びの中で培う経験を大切に保育を行う園もある。どのような園に子どもを入園させたいかは親が決める。近年では育児雑誌が幼稚園選びのポイントを解説したり、親たちの幼稚園選び熱を加熱させている。もちろん、既卒園児や既入園児の親たちによる口コミ情報も多いと聞く。園側の情報開示方法としては、入園申し込み時期に園の教育方針の説明会を開くことや、行事を見て貰うことが殆どである。従って、親たちは日常の子ども達の姿をみることは殆どできないといってよい。これは、新入園の子ども達の親にとってだけではなく、既入園の子どもたちの親や既卒園の子どもや親にとっても同様のことがいえる。自分の子どもがどのような園に通い、どのようなことをしているかを知りたいという親も多い。園と親が連携をとって子育てにあたるためにも、親たちが園やそこで繰り広げられる子ども達の生活を理解することも必要である。そこで、多様な園がホームページを開設することにより、親たちが幼稚園に関する情報を他者からのバイアスがあまりかからない形で見ることができるであろうし、子ども達自身もホームページを通して自分の幼稚園を見ることができるであろう。

 また、親たちだけではなく、幼稚園相互でも他園の様子をホームページを通して見ることにより、自園の保育を見直したり確認したりするきっかけになると思われる。

 全国の幼稚園のホームページのリンク集(まさおの部屋,幼稚園ナビゲーター) によると、全国14,790園のうち、ホームページを開設しているのは、ほぼ230園(約1.6%)程度である。しかしながら都道府県別でみると、石川県は、設置幼稚園72園中、65園(82.3%)がホームページを持っている。新潟県は、172園中1園(金城幼稚園;南魚沼郡塩沢町)のみである。このように、まだまだ幼稚園におけるホームページ開設普及率はまだまだ低いのが実状であるが、国立大学附属幼稚園ではその殆どが開設している。ホームページ開設の目的は様々であると考えられる。先にも述べたように、少子化の影響で新入園児獲得のための一手段としてとらえているところもあるだろうし、幼稚園相互の研鑽のために保育の内容を開示しているところもある。研究会の案内を掲載し、実際に保育の研鑽を相互にしていこうと呼びかけているところもある。
 また幼児教育者を志す人たちにとっても、子どもの様々な姿を見る機会を提供することは有用なことだと考える。例えば、本学の幼児教育学科の学生は教育実習で付属幼稚園を訪れるが、実習時以外の子どもの姿を案外知らないようである。従って、このホームページを通して、1年を通じての子どもの生活や育ちを見て貰うことにより、自分が幼稚園教諭になったときに行う保育での何らかのヒントになるのではないかと考えている。本学の学生だけではなく、日本のどこかの学校の学生や教員、あるいは、幼児教育に関心のある人々に見てもらうことにより、ひとつの幼稚園の姿を見てもらいたい。学生にとっては、教育実習と教科書の中間になるような存在の幼児教育の媒体としてこのホームページが位置づけられるようにしたいと考えている。
 以上のようなことから、日常の園の生活をより多くの人に知って貰い、幼児教育に対する理解を広げようと県立新潟女子短期大学付属幼稚園のホームページを作成することにした。本園は、筆者が日常的に出入りしている園である。園での子ども達の生活やその背景については、本園の教員と園内研修などで話をしたり、筆者自身がカメラやビデオカメラを持って保育の中に参加しているために理解しているつもりである。そういった保育の中での子ども達の様子や子どもたちがつくりあげていったものをこのホームページを通して公開することにした。本園では子ども達は、子どもらしくあどけなく育っている。そういった姿を見て貰うことにより、早期教育の中の子ども達との違いを認識してもらい、子どもにとってどのような経験が必要なのかを考える布石としてもらいたいとも考え、ホームページの構成を考えた。
 ホームページは、幼稚園の概要、行事、子ども達の作品、アルバム、研究会のお知らせ、幼児教育関係リンク集(作成中)から成り立っている。
 幼稚園の概要は、本園の幼稚園要覧と同様のものである。
 行事は、前年度のものを掲載している。本園では、行事のための保育とならないように心がけているため、他園に比べ行事は少ない。行われる行事も毎日の生活の集大成となるようなものにしたいと心がけている。このような行事に対する理念も読みとって貰うことが出来るように、今後改訂していく予定である。
 子ども達の作品では、平成8年度に子ども達が作った紙芝居を載せている。これは、子ども達が読むことの出来るように、すべてひらがなで記述した。  アルバムは、一年を通じて子ども達が経験したことをいくつか取り上げた。「○○ができるようになった」といった結果重視の経験ではなく、その時その時に子ども達が何を経験したか、どんな情動体験をしたかに思いを馳せてもらえるような写真をとりあげたつもりである。写真の解像度が低いため、写真のうつりは悪いが、子ども達の肖像権の侵害につながらないことにもなると考え、このまま掲載した。写真に、何歳児のものかを記述しなかったのは、年齢にとらわれずに子どもの経験をみてほしいと考えたからである。行事の全ての項目からアルバムへのリンクが張られるように今後改訂していく予定である。  研究会のお知らせは、郵送する案内とは別に、興味を持って参加してくれる人を募集したいとの考えと、幼稚園では保育をよりよくするためにこのような会を催しているとの理解をひろめるために掲載した。研究会終了後は、研究会でのトピックスなどを掲載する予定である。
 幼児教育関係リンク集は、国内外の幼児教育研究機関等へのリンク集を作る予定である。家庭で育児をする人々や幼児教育に関心のある人たちのために、営利情報にふりまわされないような幼児教育関係の情報提供の場としていきたいと考えている。
 以上が本学付属幼稚園のホームページ作成の意図である。これらの意図がさらに多くの人に伝わるようにしていきたいと考えている。

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